今はなきSun Microsystemsが2003,4年ころを真ん中にして7,8年やっていたプロジェクトにProject Looking Glass がある。https://lg3d.dev.java.net/ のURLはまだ生きているようだ。このlg3dプロジェクトは、さまざまないきさつと運命を持っていたように思う。すべてを知っているわけではないが、多少、時が経って、思っていることを書いてみよう。某日本企業でソフトウェア開発をしていたK氏がSunに移ったことは、当時、NTTの友人から聞いていた。なにをしているのだろう?三次元デスクトップ。おもしろい。それでさっそく訪ねていろいろと話を聞き、テストしてみた。ブラウザウィンドウが裏返って裏にメモをつけておいたり、ウィンドウを書棚に置くように立てて並べたり、いろいろある。当時のLonghornにも似たような機能が急遽入っていった。それがLonghornにとってよかったかどうかは別だ。ともあれ、なんどかやりとりをして、方向性の確認とか、当時シリコンバレー近辺に居た友人・後輩たちと一緒に飲み会をやったりした。だいぶ前のことである。このデスクトップはUnix系、もっといえばX-Windowの上で機能するのがベース。Windows用もできたかもしれない、忘れてしまった。今にも続き、まだ答えがでていないテーマがいろいろある。おもいつくままに箇条書きにしてみる。
1.OpenGLそしてDirectX:三次元アプリのプラットフォームのカギはOSでもない、使用プログラミング言語でもない。究極はGraphic Accerelator チップの仕様である。NVidiaかATIか、あるいはもっと具合の良いチップがあるかということだ。しかし、その議論を本当に自分のものとして真剣にできるWizardはそうはいない。その手前のレベルがあるとすれば、用意されたライブラリが何かということである。Windows系であれば、もうDirectXの世界になる。グラフィックメモリに直接書き込み、書き換えることを含めたインタフェース群である。三次元アプリ、特にゲーム屋さんには必須アイテムになっていて、DirectXのプロというか、DirectXだけあれば仕事ができる、というような人たちもいる。Open GLはもともとSGIだったとおもうが、作っていた三次元グラフィックスライブラリである。Unix・Linux系だけでなく、Windowsなどのものもあるクロスプラットフォームのツールである。ツールの高性能化への努力はかならずしもOpen GLは継続して行われてきたとはいいがたいが、もろもろの要件からOpen GLがのぞましいというケースも多々存在していた。そして、しぶとくOpen GLを使いこなす人たちも居る。また、新しいタイプのライブラリが生まれて、新人類が誕生しないわけではない。ゲーム屋どっぷりのこてこての書き手も居る。三次元グラフィックの世界にオブジェクト指向をなどといわれてがくっとくるひとたち、こまかな性能がなんだといわんばかりにそういう高位のインタフェースでアプリを書くことを平然として行うひとたち、さまざまな人間模様がある。三次元アプリの普及に際してテクノロジー供給側の焦点のひとつである。
2.仮想空間の実現は三次元デスクトップと原理的に変わらない:と、私は思っている。いわゆるSecond Life的世界の話と三次元デスクトップは共通するコンセプトだと思っている。VUI、Virtual User Interfaceとしての視点である。Command and TypeからPoint and Selectへの移行がデスクトップの特に一般ユーザ用には存在した。コマンドプロンプトウィンドウからアイコンクリックへというやつである。この先に三次元の世界でのインタフェースがあると思っている。サンプルはBlueMarsの上で試してみている。これについてはいずれ。
3.三次元デスクトップの現実的ニーズはあるか:ということが目下の課題である。デスクトップが三次元になってうれしい人がどれだけいるか、あるいはそれを本質的に便利になった、進歩した、これで助かった、と思う人がどれだけあるかということである。三次元デスクトップを実現するにはコストがかかる。性能、開発費など両面で。遊びとしてはおもしろいが、実用性はあるのか、ということ。これにはエンジニアは答えは出せない。お金儲けにたけたビジネススクールの卒業生なら可能かもしれない。
4.三次元に必要なハードウェアの価格は十分な水準まで下がっているか、価格性能比は実用化に十分なレベルに安定したか:結局メーカが手をだすかどうかはキラーアプリがあって、かつ、この問題に答えが出てから後になるだろう。グラフィックアクセレレータのことであれば、スマートフォンとかiPadはじめとするタブレットなどにどんどんよいチップが組み込まれようとする気配である。いわゆる中華Pad等にもアクセレレータがしっかりと載るかどうかという時代に入っている。こうした機器が2,3万円で手に入るようになれば時代はかわる。
これが今、Project Looking Glassが気になる理由である。K氏は某G社へ移ったらしい。今頃どうしているだろうか。日本人の活躍という点でも気になる。大いに支援していきたいのだが。