「統計で嘘をつく法」、だったかそんな名前の教科書副読本的な昔の本があった。数値としては正しいが、ある側面だけを強調していくことで、特定の印象を与えることができる、という統計の持つ「特質」をユーモアもまじえながら説明している。
NHKで、韓国の海上警察官が、中国の不法操業船の取り締まりの際に、死亡したニュースをやっていた。いたましいことである。そして、その背景に中国での水産物消費の増加があるという。そこで、Googleに聞け、ということで、「水産物 消費量」を入れてみた。ほとんどすべてでてくる情報は「一人当たり」についての情報だった。そして、日本が一番多いと。NHKでやっていたのは、「世界の総消費量の約3分の1が中国で消費されている」、ということだ。これは驚くべき数字ではないか。しかし、Googleで、日本のGoogleで引くと、一人当たりの水産物消費は日本が一番多い、ということについての情報がほとんどである。
以前の、違法コピーの件を思い出した。この時、(その国で使用されている有償ソフトウェアの中で)違法コピー「の率」が一番多いのは、中国そしてベトナムなどとなっていて、それが広く広められた。しかし、元のデータでは、同時に違法コピー被害額の総量もつけられていた。それでは、当然、いわゆる先進国での被害額がだんぜん多いのである。しかし、総量についてはほとんど問題にされなかったと思う。違法でコピーされて困っているソフトウェア製造者が言うのであれば、絶対額を問題にするはずである。この統計を出すマインドセットが浮き上がる。
一人あたりの水産物消費量は日本が多い、という統計は、なにを意識してとりあげているのだろうか?少なくとも個人生活に焦点をあてている。水産業全体ではないのだ。